好きとか嫌いとかじゃないの。なんか生理的に受け付けないっていうか、もう前世からの因縁的にも拒否反応?まぁ、そんな感じなわけよ。
そう憎々しげに吐き出すと、アリエルは「…で?」と、たいして興味もなさそうな表情で、今朝方ギルドから受け取ってきたばかりの依頼書の束をぺらりとめくる。

アイツの何がムカつくかって、まず何より、あのナルシーっぷりよ。なにあの『俺様世界一なんですー』みたいな態度。初対面のあの爽やか笑顔はどうしたのよ、っていうか、あの胡散臭い顔に騙されたこともムカつくんだけど…とにかく、自分が世界で一番偉いと思ってるのとか理解できない!

その初対面の自分の愚かさとやらを思い出しのか、ガンっと蹴りつけた机が揺れる。その拍子にペラリと落ちた依頼書は、近所の八百屋のおかみさんが出したのかネズミ駆除。報酬100φ。安い。

挙句の果てにはちょっと気に入らないことがあれば、溜めもなく火ぃ出すわ、水出すわ、あんたはどっかのサーカス団かっての!この間なんか、ほんの少しアイツの荷物に細工したら、危うく氷漬けよ!?

「…なにやったんだよ。」
「荷物の紐の部分あるじゃない、あれを引っ張ると中から虫のおもちゃが出てくるように――」
「…よく生きてたな。」
「全力で逃げまくったけど追いつかれたから、とりあえずロウくん盾にしてきた。」


――通りでこの間、1日見かけなかった日があったわけだ。

ロウさんお気の毒に。
心の中で合掌しつつ、どこか遠い目をするアリエル。


まぁ、そんなこんなでナルシーだわ、短気だわ、暴力男だわ、口は悪いわで人間的に最悪レベルなわけじゃない。正直、あそこまで人間として捨てちゃいけない良心を綺麗さっぱり捨ててるとこはもう潔いくらい。
良いのはほんと顔だけよ。顔だけ!!

「…お前、この間その顔に思いっきり殴りかかってなかったか?」
「それはそれ。隙があれば、全力で行く。」
「あっそ…。」

なんだか疲れたような表情をされたが気にしない。
イライラしながら、再び机をガンっと蹴りつけるが、今度はアリエルによってとっさに抑えられた依頼書は飛ばなかった。ちなみに纏めた一番上の依頼書は『新薬の実験台、10000φ』。どこからの依頼だ。


あたしだって今までアイツの人外な性格を小指の爪の先の垢ほどは理解してやろうと思ったことだってあったのよ?なんだかんだ言っても、この呪い解くまでは縁も切れないんだし。どうせ一緒に動かなきゃいけないなら、少しでも改善した方がいいじゃない!

「で、人が妥協してやったら、何て言ったと思う!!?」
「………さぁ」
「腐れ男に死ぬ思いして向けてやった笑顔を気色悪いよ、気色悪い!!!あーもうっ…あんのクソヤロォォォォォ!!」

ガンガンガンッ!!!
盛大に蹴りあげた机から、纏めてあった依頼書の束が落ちる。
一瞬にしてバラバラになった依頼書。アリエル、今までの作業全てが無駄骨になった瞬間。



「アンタの胡散臭い笑みのほうが気色悪いっての!」

ねぇ、アリエルもそう思うよね!!
勢いよくガッツポーズを決めての台詞など、もはや聞いていられない。


踏みつけられた無残な依頼書をもう一度組み直すには
……朝から今まで、3時間。




そして最後にくのは、

他でもない僕



「………迷惑度なら、どっちもどっちだ。」



2010.12.05 ... 燈箭